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顎骨壊死過敏症
歯科で抜歯後に顎骨壊死の可能性が…最近よく耳にする言葉です。最近では、ある程度の年齢層の方が歯科受診して、抜歯や顎骨に侵襲を加える治療を受ける場合は、骨粗鬆症の治療をしているか必ず聞かれると思います。
そして、骨粗鬆症の治療を受けている場合は歯科で主治医に相談を…と言われ、それを受けた主治医の多くは骨粗鬆症の治療を中断するようです。具体的にはビスフォスフォネート製剤の内服を中断…
しかし、それってホントに中断していいのでしょうか
ここに参考データを紹介…
米国口腔顔面外科学会によれば、ビスフォスフォネート製剤(骨粗鬆症治療薬)の顎骨壊死発現率は
・静注薬0.8〜12%、
・経口薬0.1〜0.4%、
・経口薬と抜歯との組み合わせでは0.9〜3.4%
だそうです。
もうひとつ、オーストラリアでの報告をみると、2004~2005年の報告ですが、
全体 骨粗鬆症
・BP系薬剤与例全体 0.05〜0.1% 0.01〜0.04%
・そのうちの抜歯症例 0.37〜0.8% 0.09〜0.34%
となっており、このデータをみると、骨粗鬆症だからとか、ビスフォスフォネート製剤だから…っていうことで発生頻度が明らかに上がっているとは言い難いですよね…
注射薬の12%は確かに高いですが、これは特殊な状態…ガン治療でしか行われません。それも骨粗鬆症で使う薬の量の何倍も多い大量投与です。骨粗鬆症の治療では経口薬が該当しますから、内服継続しながら抜歯治療をした場合の数値0.9~3.4%…ってことですが、この数値…そんなに高いでしょうか
ちなみに、高齢者の転倒による骨折の頻度は50歳以上で5%と言われています。しかし高齢になればなるほど確率が上がるでしょうし、より高齢者に限って言えば、この確率はさらに高いものになるでしょう。
高齢者が寝たきりになる大きな要因に骨折があります。さすれば、転倒による骨折の危険性5%以上か、顎骨壊死の0.1~0.4%(抜歯を加えても0.9~3.4%)…どちらが高確率か…
ちなみに…カナダでは、ビスフォスフォネート製剤と顎骨壊死に関連なし…って言ってるようですし、米国では、経口薬での顎骨壊死の発症リスクは非常に低いのでビスフォスフォネート製剤投与を理由に歯科治療を変更すべきでない、口腔清浄が有益…と言ってるようです。
そして、抜歯後の顎骨壊死の原因は、ビスフォスフォネート製剤長期使用以外に、癌化学療法、顎骨への放射線治療、ステロイド薬、糖尿病、喫煙、飲酒、口腔内の不衛生などによって発生率は増加するといわれています。特に口腔内の不衛生は重要なようで、口腔内清浄をきっちり行うだけで顎骨壊死が1/5に減少したというデータもあるようですし、上記データを見ても、ビスフォスフォネート製剤服用だけでは0.1~0.4%なのに抜歯が加わると0.9~3.4%にアップ…これってビスフォスフォネート製剤が原因って言えるんでしょうか
さて、以前の記事を読んでいて、その上で、ここまでお話すれば、察しの良い方ならどこに問題があるか分かるかもしれません。
…以前の記事を読んでない方は、それを読んでから今日の記事を読んでね~…
顎骨壊死は、ビスフォスフォネート製剤の不適正使用・口腔内不衛生が大きな要因と考えられます。年だからという理由だけで骨粗鬆症の薬を飲んでいる方、かかとの骨で測った骨密度だけを理由に骨粗鬆症の薬を飲んでいる方…そんな方は骨質が悪くなっていて、顎骨壊死の確率も点滴している人みたいに上がるんではないでしょうか…言い換えれば、骨質が良くない人は顎骨壊死になりやすい… そして口腔内不衛生も当然大きな要因
なので、抜歯するから骨粗鬆症の治療をやめる…という、いかにも短絡的思考で動かず、きちんと骨代謝を測定したうえで、骨代謝が不適正であれば治療を中断すべきでしょう。定期的に骨代謝をチェックして治療を行っている方は何ら問題なし
…ず~っと前から言ってるのに、世間はなかなか動かないのよね~…