キズ治療の歴史

キズ治療法の歴史

 さて!傷の治療の歴史的変遷を知ることは、湿潤治療を語る上で必要不可欠と思いますので簡単に…(笑)

 これまで医学の祖「ヒポクラテス」や外科医「リスター」らなど偉~いお医者さんによって提唱された「傷は乾燥させる」「創傷を被覆する」という考えが創傷管理の2大コンセプトとなり、「創面の細菌除去」「細菌の進入防止」「創面の乾燥」という「リスター主義」とも言われる方法を実践できる事が一流の医師の証とされてきました。

 まあお偉いお医者様がこうしなさい!って言ったもんだから皆右に倣え!ってんでこんなしきたりができてしまったわけです。特にリスターの話は世界的に有名な権威ある科学雑誌「ランセット」に掲載されたものだからその影響力は計り知れないものがあります。

 余談ですが、その昔医学が暗黒の時代だった頃、お医者さんは黒装束だったそうです。何故かというと、素手で血まみれになって患者さんの治療をした後、服で手をぬぐって次の患者さんの治療をこれまた素手で行っていたそうな。黒い服は血が目立たない格好な服装だったわけですね。そんな時代ですから患者さんは皆、感染して化膿し死んでいったわけです。化膿することが良いとされた時代もありました。今思えば恐ろしい時代ですな~!生き残る確率の方がはるかに低い、まさに暗黒の時代!
 そこにリスター先生がこんな事を言い実践したところ、皆死ななくなったわけですから、その衝撃といったら凄いもので…。で、皆この衝撃にとらわれ、そこから進歩する事を忘れてしまったわけです。

 しかし一方で、この考え方は1942年のココナッツグローブ大火を境に変わり始めます。この大火事で沢山の火傷患者が発生し、病院ではその治療に追われました。そんな中コープ先生は以前ひょんな事から思いついていつかやってみようと思っていた「湿潤治療」を実践したところ、近隣の病院に運ばれた患者さんよりコープ先生の病院の患者さんは有意に早く治ったんだそうです。これは医学史にとって衝撃的な事件だったので今でも一部の外科の教科書に引用されているそうです。σ(o^_^o)は見たことありませんが(;^_^A アセアセ…

 1962年にはウィンター博士が動物実験で湿潤環境(湿潤治療(閉鎖療法))の優位性を立証しましたが、彼が動物学者だったため、この有意義な研究成果はしばらくの間お医者さんの目にはとまらなかったそうです。一応翌年の1963年には人間で同様の報告があったのですが…

 1970年代に入り、ようやく数々の基礎研究で湿潤環境保持の有用性が証明されましたが、現在も古くからの慣習という理由だけで「消毒しガーゼで覆う」「乾燥させる」という方法が、最も一般的な方法として行われているのが現状です。
 まあ、今までバッタバッタと死んでいたのが全く死ななくなったわけですから、この劇的な改善という呪縛から皆逃れられなくなっていたんでしょうね~。そして創傷治療は進歩しないまま30年以上過ぎていきました。

 σ(o^_^o)が医師になった頃も「消毒しろ」と教えられましたし、傷を洗う無菌の水にも消毒液を混ぜて洗う事を推奨されました(;^_^A アセアセ…

 日本では上記のごとく現在でも消毒と乾燥という行為が横行しています。日本で最初に従来の慣習に対して異論を唱えたのは「ドレッシング・新しい創傷管理」の著者である穴澤貞夫先生でしょうか?この本が日本で最初に湿潤治療について説いた本だと思われます。この本は、1995年すでに出版されています!…なのに現在もなお従来の慣習として消毒と乾燥という行為が横行しています。

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